日本発祥のもの
QRコード
発祥の地
愛知県知多郡阿久比町
発祥期
1994年(平成6年)
考案者
原昌宏
QRコードの起源
QRコードは、1994年(平成6年)に自動車部品の製造現場で、原昌宏が部品の生産管理を効率化するために作ったのがはじまりです。
トヨタグループの自動車部品メーカーであるデンソーで、原昌宏は開発部門(現在は株式会社デンソーウェーブ)に在籍していました。
当時、デンソーの製造現場では部品をバーコードで管理していましたが、バーコードに情報がおさまりきらず、バーコードを8〜10個並べて読み取る必要がありました。
効率が悪く、一度で読み取れたらいいのにと現場から要望が出たのです。
当時、1次元のバーコードに比べて情報量が多い他社開発の2次元コードもありましたが、読み取りに時間がかかるという課題もありました。
そこで、読み取りと処理の速さを追及したコード開発が1992年(平成4年)にはじまります。
情報を2次元の格子状にすることで情報量を増大させることは可能でしたが、読み取りや処理の速さをどのように実現していくのか。
これは、昼休みに打っていた趣味の囲碁がヒントになりました。
碁石の位置が少しずれていても碁石の並びや順番そのものには影響せず、ゲームとしては問題ありません。
それまでは、情報は「正確に」読み取るものでしたが、格子の並びや順番を大雑把に読み取らせることで高速化したのです。
さらに、速さと正確さのために3つの工夫をします。
一つ目は、3つの四角い「切り出しシンボル」です。
「切り出しシンボル」でコードがここにあると知らせることで、360°どの方向からでも読み取れるようになりました。
二つ目はひずみの補正機能です。平面以外のQRコードも読み取れるように、「アライメントパターン」というシンボルを入れます。
このアライメントパターンを起点にズレの量を補正して計算することで、ひずみを補正して正しい情報を読み取ることができるようにしました。
三つ目は本来のデータの他に、データ同士を紐づける予備的なデータを複雑に入れることでコードを復元する機能です。
1994年(平成6年)、製造現場や物流でも問題なく利用できるようにといった利用現場を第一に考えたコードが完成し、Quick Responseの頭文字からQRコードと命名されました。
情報量はバーコードの約200倍で、数字で7089文字、かな・漢字表現も可能です。
読み取り速度は0.03秒/枚という他コードよりも10倍以上の速さを実現しました。
曲面でも使用できます。汚れや破損が最大3割あっても読み取り可能な復元機能も備えています。
QRコードは自動車部品業界の生産管理に使用され、生産から出荷・伝票作成の全ての流れが効率化されたのです。
QRコードは特許を出願しましたが、広く応用してもらえるようにとの思いから特許を完全に開放して技術特許使用料は取らないことにしました。
オープンコードにしたことで少しずつ利用が進んでいきます。
当時は食の安全が問われたBSE(牛海綿状脳症または狂牛病)問題もあり、生産現場から流通、食卓までのトレーサビリティを可能にするとして小売業界にQRコードの利用が広がっていきました。
さらにはコンタクトレンズ業界の商品管理や医療現場での投薬管理などにも利用されるようになります。
QRコードは様々な場面で利用されるようになり、1997年(平成9年)に自動認識業界の規格AIM規格に制定され、1999年(平成11年)には日本工業規格になりました。
翌年にはISOの国際規格となるなど、規格化・標準化され世界中で利用されることになります。
ガラケーが普及し、2000年代にカメラ付きが登場してQRコードの読み取り機能が搭載されると、Webへのアクセスなどを促すプロモーションに利用されるようになります。
そしてガラケーに代わりスマホが普及すると、日常で利用する機会が飛躍的に増えていくのです。
地域情報の取得、道案内、チケット、キャッシュレス決済、切符、Wi-Hi接続設定、顔認証、鍵としての利用やホームドアの開閉制御、物流では荷物の自動仕分けでの利用、認知症徘徊者の保護の際の身元確認、シャアサービスでの利用など、あらゆる場面で利用されれるようになりました。
現在では、マイクロQRコード、長方形や表裏反転などもできるiQRコード、読み取り制限機能を搭載したQRコードやフレームQRといった用途に応じたコードが規格化されて用いられており、世界中で生活を支えるものとして利用されています。